美味しい焙煎時間とクロロゲン酸について考える

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※私なりの仮説から結論づけていますが、一つの方法論を否定する意図はありません。また、全ての焙煎方法に個性と好みがあることも重々承知していますのでご了承ください。

香りや美味しさをどうやって残すかというのは、先人たちが経験則の中からある程度導き出してはいますが、エビデンス(科学的な証拠)が伴った記事というのはあまり見かけません。

そこで、珈琲焙煎にとって重要なファクターである香りについて調べてみました。

ちなみに、火を通す時間が長すぎると香りが飛ぶという話はよく耳にしますし、高温短時間焙煎が美味しいとされていますが、一方で、熱風式による高速焙煎は美味しくないなどと、真逆のことを同時に論じている人もいます。感覚的にはなんとなくわかるのですが、香りが飛ぶ温度が50℃なのか、100℃なのか、150℃なのかによって、焙煎時にどの温度帯を意識すれば良いのかということに関して、はっきりとした結論というのは出ていないと思います。

例えば、100℃で飛ぶ香り成分、変化する不快な苦味成分が多いのであれば、焙煎自体の時間をどれだけ短くするのか、という部分がコツのようになってきますし、短時間焙煎は香りが良いという仮説を立てることができます。

一方で、150℃までは香り成分はあまり飛ばず、不快な苦味成分は出ないということであれば、150℃までは丁寧に時間をかけて水抜きをしたのちに、150℃以降の工程は一気に強火で焙煎するといった手法を用いることで安定的な味が出せるかと思います。

実際には、香りとなる要因は数百種類あると言われているので全ての成分を特定することは難しいと思いますが、主となる成分であるクロロゲン酸を理解し、その成分が変化する温度を意識することで香りの高い珈琲を焙煎することができるようになるのではないかと考え私は焙煎しています。

私のブログにも温度変化による科学反応を軽くまとめましたが、メイラード反応が始まるのが150℃、加水分解が始まるのが165から170℃と考えると、風味や味に変化が出る温度帯は150℃以上からと考えています。

香(こう)ばしい香りを放つクロロゲン酸は、高温でその含有量は極端に落ち、加水分解してできたカフェ酸も加熱分解により強烈な苦味を生み出すビニルカテルコールを生み出し重合し、強烈な苦味を生み出すようです。

特にクロロゲン酸に関連する物質は、温度変化は170℃を超えた辺りから加水分解と加熱分解による消失が同時に起きているなど味の変化が激しくなるようで、高温短時間焙煎というのは、言い換えると「170℃以上から先の温度帯は高温短時間焙煎」という捉え方もできるかと思います。

つまり、1ハゼまでの時間を早めて水分が残ってしまうより、低温度帯(150℃くらいまで)でしっかりと水抜きをすることで、高温度帯で水分が残ることで起こる加水分解反応を減らすような焙煎をした方が良いということになるのではというのが私の仮説とこれまで焙煎してきての所感です。

※別の方のブログで、165℃付近にて加水分解が起きやすいとの記述はありましたが、関与する文献は発見できず。

また、焙煎時間の長さを比較した動画を偶然YouTubeで見つけました。

私も焙煎のプロトコルを毎回取っていますが、水抜きの時間は長くても香りや味などに影響していませんので、一概に高温短時間焙煎が良いとは言い切れないと思っていますし、下記の動画の結果を支持します(笑)

面白いことに、AとBの比較対象の焙煎時間を、1ハゼまでの時間に差をつけ(10分と20分)、1ハゼから煎り止めまでの時間は同じという私の仮説を検証するような動画を発見しました。

お二人で官能評価をしていますが、1ハゼまでの焙煎時間に差をつけてもあまり変化はなく、むしろ1ハゼまでの時間を長めにとった方が美味しいとの意見まで出ていました。

↑Kenken coffeeさんより引用

他にも興味深い実験がされてますので、是非見てください。

水抜きは150℃以下でしっかり、170℃以上は素早く煎り止めすることが美味しい焙煎方法ではないかというのが私の結論です。

とある珈琲屋の方が、「水抜きというのは意識する意味はない、焙煎が終わる頃には水分は無くなる」と仰っていましたが、私は、「水分を飛ばすことが重要なのではなく、加水分解が起きて不快な苦味成分が変化する温度帯までに極力水分を飛ばし、加水分解をなるべく抑えることが重要」だと考えています。

特にニュークロップなんかは乾燥機にかけて水分値を低くしてから焙煎するとすごく美味しくなるのでは。。。

どなたか検証を(笑)

時代時代で味や好みも変化するので、本当に焙煎て奥深すぎますね。

長くなりましたが、「手間をかけることが美味しい」という考えは違うと思っていて、「美味しくする為に手間がかかる」であれば納得となります。

意味のない手間というのは、味には全く関係ありませんし、焙煎する人の自己満足だということを肝に命じて焙煎をしていきたいと思います。

また、温度帯に関してそれは違うといったご指摘や、別の実験結果が得られたなどありましたら、是非お知らせください。

柔軟に訂正や追記をしたいと考えています。


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